『下町』は日本中に人情があふれていた昭和32年に公開された珠玉の名篇だ。

  夫がシベリアに抑留されて帰ってこない子持ち妻の山田五十鈴は、お茶を行商して暮しているが、下宿屋の女将から愛人にならないかと紹介される等、苦労が多い。ある日無愛想だが親切な労働者、三船敏郎と知り合いそのやさしさにひかれていく。

  子供と三人で浅草デート、帰りが遅くなり宿に泊って結ばれるシーンが巧い。夫にすまないと想いながら男の激情に身をまかせてしまう山田五十鈴が切なくも艶っぽい。

  子供も三船になついてハッピーエンドかと想いきや、ふとした行き違いがなんとも悲劇的な結末に…。

  ハッピーエンドが大好きで、悲しい映画がきらいなあっしだが、この映画は別だ。あまりにもリアルだから。そうだよな、世の中ってほんのちょっとの行き違いでガラリと展開が違ってくることってよくあるもの。

  60分の短篇ながら…